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子どもの心を育む 絵本の読み聞かせ
~絵本専門士 鴫原晶子さんに聞く~

子どもにどんな絵本を選べばいいのか、どのように読んだらいいのか、そもそも、子どもに絵本を読むといいと言われているのはどうしてなのか…。
“絵本の読み聞かせ”に関して、こんな悩みや疑問を持ったことはありませんか?
そこで今回は、「絵本専門士」として幅広く活動されている鴫原晶子先生にインタビュー。
絵本とは何なのか、読み聞かせがなぜいいのか、いい絵本を探すヒントなど、絵本に関するさまざまな興味深いお話を、連載でお届けしていきます。

<鴫原晶子さん>

絵本専門士。
幼稚園教諭の経験を経て、東京教育専門学校・前副校長、現在非常勤講師。保育園の園内研修や子育て講座の講師を務める。
代表を務める「保育と絵本の研究会GOBOの会」にて、おはなし会や勉強会なども実施。
ペーパークイリングインストラクターや、おもちゃコーディネーターの肩書きも持つ。

[第1回] 「絵本」とは何か? ~私と絵本との出会い~

“絵本の魅力と可能性”を伝える、絵本のスペシャリスト

「絵本専門士」とは、絵本に関する高度な知識、技能および感性を備えた絵本の専門家。幼稚園や保育園、学校、図書館や医療機関など様々な場所で、絵本の素晴らしさや活用法を伝えることを目的に、国立青少年教育振興機構が2014年から始めた資格制度です。受講資格は、絵本や保育に関する実務経験がある人。私は第3期生ですが、図書館司書、小学校の先生、幼稚園の先生、編集者や書店員など、全国からいろいろな職種の方が集まっていました。

書類選考を通過した受講生は、絵本の歴史・出版に至る過程・絵本の紹介方法など、絵本に関する「知識」、おはなし会やワークショップを開く「技能」、対象を幅広く捉えた絵本に関する様々な「感性」を習得するべく、多くの授業を受けます。課題やレポートは大変でしたが、絵本に関わる専門家、著名な先生方の話を聞くことはとても楽しかったし、得るものがたくさんありましたね。

今は絵本専門士として、数か所の保育園で定期的に「おはなし会」を開いたり、保護者向けの講演会に呼ばれたり、保育者研修会で講師をしたり、という活動をしています。

一冊の本との出会いが、絵本の世界に入るきっかけに

小さな頃は、特に家にたくさん絵本があったわけでも、読書好きでもなかったんです。きっかけは高校3年生のとき。教会の日曜学校をお手伝いしていたのですが、先輩がある日、一冊の絵本を読んでくれて。それがもう本当に、すごく引き込まれる読み方で、「絵本ってなんて面白いんだろう!」と感動したんです。

読んでくれたのは「八郎」(作:斎藤隆介/画:滝平二郎(福音館書店))という絵本。秋田の八郎潟の伝説的なお話で、文章も秋田の言葉で描かれています。版画絵も力強くて迫力満点。そこに、先輩の語る秋田弁がよくマッチしていて、ガシッと心を掴まれました。今でも好きな絵本は?と聞かれたら、「八郎」と答えるくらい好きな絵本です。

その後、大学で著名な先生の講義や児童文学の授業を受けて、さらに絵本が大好きに。そこから絵本のやみくもなる収集がはじまり、蔵書が3000冊を超えた2008年に、自宅の一室を家庭文庫仕様に改築しました。現在そこは【こぶた文庫】として、絵本を研究する学生や保育者たちとの学びの場にしています。

絵本専門士になった今でも、絵本の購入を続けていますし、学生との交流や保護者の方からの質問などでも学ばせてもらうことが多いです。こんなにどっぷりと浸ることのできる「絵本」という世界に出会えて、本当に幸せだなとつくづく感じています。

絵本は、子どもが “絵を読んで、耳で聞く本”です

絵本とは何か、また絵本の面白さや奥深さは、とても一言では言い表せません。あえて言うとすれば、作家や画家が考え抜き、工夫を重ね、全力で、心を込めた、素晴らしい絵と素晴らしい言葉がつまっているのが絵本です。そして、親子が時間を共有し、読み手と聞き手が心を通わせることができる、最高のツールであると思います。

さまざまな立場の専門の方々も、絵本についての定義を述べられているので、今回はいくつかご紹介しましょう。

「絵本は子どもが読むものではありません。大人が子どもに読んでやるものです」(元福音館書店社長、児童文学者 松居直)
絵本を子ども自身に読ませようとする人は多いもの。でも、大人に読んでもらうことで初めて、子どもは安心して想像力をふくらませ、ファンタジーの世界を素直に楽しめるようになります。絵本は、大人に読んでもらって、子どもが“絵を読み、耳で聞く本”なのです。

「絵本は子どもが初めて出会う芸術です。初めての絵画・初めての文学です」(フェリス女学院大学教授 藤本朝巳)
芸術は人によって解釈が違います。ですから、絶対!ということはあり得ないかもしれません。でも、幼い子どもにとっては、見て心地いいもの、聞いて心地いいものから始めたいものです。少なくとも「興味なし」とならないような、いい絵本を選びましょう。

「絵本は心の食事です。だから毎日いいものを与えます」(認定こども園副園長 Y.S)
健やかな身体に育つよう、子どもには健康にいい食べ物や栄養バランスを考えた献立を与えていますよね。同じように、豊かな心を育てるには、いい食事(=絵本)が必要なのです。

「絵本は人生に三度」(ノンフィクション作家 柳田邦男)
①幼い頃に読んでもらい、②親になったとき我が子に読んであげて、③人生の終盤には孫のため自分のために読み直す。幼い時に読んでもらっていなければ、「人生に三度」にはなりません。

次回は、「第2回 なぜ絵本を読み聞かせるのか?」というテーマで、読み聞かせが子どもと大人に与えるさまざまな影響についてお伝えしたいと思います。

<今回の鴫原先生おすすめ絵本>

外出もままならない、人との距離を考えなければいけない今。
ぜひ読んでみてほしい2冊をご紹介します。

「LIFE」(ライフ) 作:くすのき しげのり/絵:松本 春野(瑞雲舎)

優しく温かい絵を描かれているのは、いわさきちひろさんのお孫さん。
人は決して一人で生きているのではないんだと感じさせてくれる素敵なお話です。
お父さんお母さん、ぜひご自身のためにも読んでみてください。

「どんなかんじかなあ」 作:中山千夏/絵:和田誠(自由国民社)

目が見えないって、耳が聞こえないって、いったいどんなかんじだろう。
「想像力」「相手を思いやる気持ち」を上手く絵本にした作品だと思います。
小学生以上の皆さんに読んでほしいです。

ぷっぷるコラムメンバーズ・よこ(横山香織)

10歳・8歳・6歳のわんぱく3兄弟を育てるママライター。
親子の生活がちょっと豊かになるような、等身大の情報を発信していけたらと思っています。

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