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現役子育てママがおすすめ絵本をご紹介!

長く語り継がれる 日本の昔話の絵本

こんにちは! ぷっぷるコラムメンバーズのよこです。

皆さんは、小さい頃に「昔話」を読んでもらったことがありますか?

古くさい、残酷、難しいなどと言われがちな昔話ですが、実は魅力がいっぱい! 日本語の美しさや響きの面白さ、表現の豊かさの他、いろいろと考えさせられる内容も盛り込まれていて本当に奥深いのです。

それに、昔話や民話は、その地方によって、また時代や環境によって少しずつ変化しつつも、「欲張ってはいけない」「悪いことをすれば必ず自分に返ってくる」など、人として大切なことを伝え続けてくれています。でも、語り継ぐ人も減っている今、なかなか知る機会が少なくなっているのも事実。ぜひ子どものうちから絵本で親しんでほしいと思います。

そこで今回は、はじめての昔話にぴったりな「おむすびころりん」と、美しい挿絵が物語を盛り上げる「つるのおんがえし」の2冊をご紹介。長い年月を経ても今なお衰えない、昔話の魅力を親子で楽しんでみてください。

「おむすびころりん」 作・絵:いもとようこ(金の星社)

<1~3歳のお子さんにおすすめ>

むかしむかし、おじいさんが山へたきぎを拾いに出かけました。お昼になったので、おばあさんの作ってくれたお弁当を食べようとしますが、おむすびがころころ転がって、ねずみの住む穴の中へ。楽しい歌につられて自分も穴の中に落ちたおじいさんは、ねずみたちに歓迎され、宝物のお土産までもらって帰ります。それを聞きつけた隣の欲張りじいさんも、山へでかけていきましたが・・・?

現代の子どもたちに日本の心を伝えたい、という気持ちを込めて始まったという、いもとようこさんによる日本むかしばなし第1弾の作品です。絵も文章も、小さい子向けにわかりやすく描かれているのが特徴。昔話になじみがない子も、いもとさんの優しく温かみのある絵ならば、手に取りやすいのではないかと思います。

おむすびころりんといえば欠かせないのが「おむすび ころりん すっとんとん♪」という、ねずみの歌。この作品では、その歌の部分だけ丸文字の可愛い書体になっていて、ねずみたちの歌声のかわいらしさが上手に表現されています。我が家の子どもたちも、繰り返し出てくるこの歌が気に入ったようで、一緒になって歌い、楽しんでいました。

さて、意気揚々と出かけていった欲張りじいさん。ねずみの穴にポイポイおむずびを投げ込むと、急いで自分も飛び込みます。そして、ねずみの歓迎を受け、お土産のつづらを出してもらうのですが、2つとも貰ってしまおうと欲をかき、猫の鳴きマネでねずみを脅かします。その声を聞いたねずみたちは、びっくり仰天! いっせいに逃げ去り、それと同時に明かりも消えて真っ暗に。欲張りじいさんは、そのまま地上に戻れなくってしまうのです・・・!

ほんわか温かみのある作りにはなっていますが、良い行いにはご褒美が、悪い行いにはおしおきが待っている、ときちんと教えてくれる内容になっています。ねずみが逃げ出して急に真っ暗になる場面は、雰囲気が一変して、子どもだけでなく読み手の私もドキッとさせられました。このような昔話ならではのストーリー展開と、躍動感のあるイラストで、飽きることなく最後まで読み進められます。

いもとさんの優しい雰囲気で、日本の昔話の良さを味わうことができる、素敵な作品です。

「つるのおんがえし」 作:松谷みよ子/絵:いわさきちひろ(偕成社)

<4~6歳のお子さんにおすすめ>

昔、あるところに、じいさまとばあさまが住んでいました。じいさまが、たきぎを町へ売りに行く途中、罠にかかってもがいている鶴を見つけます。かわいそうに思ったじいさまが、鶴を逃がしてやると、その夜、美しい娘が「ひとばん とめてくださいませ」と訪ねてきます。身寄りのない娘は老夫婦の子となり、2人はとても喜びました。そして正月の近づいたある日、娘は「けっして のぞかないで ください」と言って、はたを織りはじめます。三日後、仕上がった布は何とも美しく、高値で売れ、豊かな正月を迎えることができたのです・・・。

助けた鶴が、その恩を返すためにやってくるという民話を、淡く美しく描いた名作絵本。初版は1966年ですから、自分が小さい時に読んだという方もいらっしゃるかもしれません。似た内容の物語は、全国各地で伝承されており、「鶴女房」「夕鶴」というタイトルも有名。私自身が覚えているのは「鶴を助けたのが若者で、恩返しに来た娘は、その若者の嫁になる」という内容だったので、この老夫婦バージョンの作品は新鮮で、興味深く読みました。

この絵本の魅力は、何といってもその挿絵。いわさきちひろさんの描く絵は、繊細で儚げで、どのページも名画を見ているような気分になります。透明感がありつつも凛としている娘の姿、鶴の飛ぶ姿の美しさ。幻想的な雰囲気たっぷりで、昔話の世界観をより一層ひろげてくれます。

また、松谷みよ子さんの文章も、とてもおだやかで温かく、優しく語りかけるような響き。「ちんからから とんとん」「ちんからから とんとん」という機織りの音の表現なども心地よく、日本語の素晴らしさが再認識できます。

さて、娘はお正月を過ぎると、また、はたを織りはじめました。「どんなふうに おっているのか、みたいもんじゃ」という村の人たちの言葉に、ばあさまはそっと中を覗いてしまいます。そこでは一羽の鶴が、自分の羽を引き抜いては、はたを織っていたのです。「わたくしは、ゆきのひに たすけてもろうた つるです」「すがたを みられては、もう おそばに いられません」・・・。

我が家の子どもたちは何となく話の内容を知っていたようですが、最後まで真剣に聞き入っていました。ばあさまが娘の機織りを覗いてしまうくだりでは、次男が「だめ!」と声を上げ、末っ子は手で顔を覆っていて・・・。「見てはいけない」という約束を破ったとき、別れが来ることを知っていたようです。

ラストにかけてのお話の切なさが、挿絵によりさらに際立ち、きゅっと胸を締め付けます。とても情緒豊かで、子どもも大人も一緒に物語を楽しむことができる、おすすめの一冊です。

ぷっぷるコラムメンバーズ・よこ(横山香織)

10歳・8歳・6歳のわんぱく3兄弟を育てるママライター。
親子の生活がちょっと豊かになるような、等身大の情報を発信していけたらと思っています。

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