音楽教室の耳寄り情報をお届け!教室だより
音楽教室の耳寄り情報をお届け!教室だより
メニュー
  1. ホーム
  2. 教室だより
  3. 音楽・子育て情報
  4. 子どもの心を育む 絵本の読み聞かせ ~絵本専門士 鴫原晶子さんに聞く~

子どもの心を育む 絵本の読み聞かせ
~絵本専門士 鴫原晶子さんに聞く~

「絵本専門士」として幅広く活動されている鴫原晶子先生にインタビュー。
絵本とは何なのか、読み聞かせがなぜいいのか、いい絵本を探すヒントなど、
「絵本の読み聞かせ」に関するさまざまな興味深いお話を伺う、連載第4回目です。

<鴫原晶子さん>

絵本専門士。
幼稚園教諭の経験を経て、東京教育専門学校・前副校長、現在非常勤講師。
保育園の園内研修や子育て講座の講師を務める。
代表を務める「保育と絵本の研究会GOBOの会」にて、おはなし会や勉強会なども実施。
ペーパークイリングインストラクターや、おもちゃコーディネーターの肩書きも持つ。

[第4回] 絵本に関する悩み・疑問 ① 

書店や図書館に行くと、いろいろな絵本がずらりと並んでいますよね。我が子にぴったりの本を選んであげたいけれど、いったいどんな絵本がいいんだろう? と迷ってしまう方も多いのではないでしょうか。

今回は、そんな「絵本選び」について保護者の皆さんが抱く疑問・悩みに対し、鴫原先生にお話を伺いました。年齢・発達・季節・好奇心など、絵本を選ぶ具体的なヒントがいっぱいです!

「たくさんの絵本の中から、この子にあう絵本を選ぶには?」

Q.読み聞かせは何歳から? 絵本に書かれた「対象年齢」は守るもの?
A.生後4~5か月頃がはじめどき!「対象年齢」は、あくまでも目安です

赤ちゃんが、人の顔やモノを見つめられるようになったら、絵本を提示してみましょう。発達としては、寝返りやお座りができて、手でモノを掴むようになる頃。たとえば赤ちゃんがボールを掴んだら「ほ~ら、ここにもボールが出てるよ~」なんていう風に、絵本を見せていくといいのかなと思います。

また、もっと早くに始めたいという方には、「妊娠後期からどうぞ」とお伝えしています。その頃には胎児の耳の機能もできあがっているので、お腹に向かって音読すれば、お母さんの声がきちんと届くはず。それと同時に、絵本には大人の心を癒す効果もあるので、産後半年くらいまでの忙しい時期は、お母さんが自分自身のために絵本を読むのもおすすめです。

ちなみに、絵本の裏表紙に書かれた「対象年齢」はあくまでも目安。こだわる必要はまったくありません。同じ歳でも発達具合は一人ひとり違いますし、たとえ対象年齢の絵本でも興味がない内容ならば退屈に感じてしまうでしょう。お子さんの成長や関心に合わせて判断してくださいね。

Q.年齢にあわせた絵本の選び方を知りたい!
A.文字の大きさと量、登場人物の人数、場面展開の数がポイント

年齢別に、その発達段階に沿った、適切な絵本を選ぶポイントを紹介していきます。

★0~1歳代

0歳代はいわゆる「赤ちゃん絵本」がおすすめです。文字は大きく、見開きに2~3語のみ。登場する人物(もしくはモノ)はだいたい一つで、背景はほとんどなく、分かりやすい絵が特徴です。
テーマは食べ物・動物・乗り物など身近なもの(「どうぶつのこどもたち」(文:小森厚/絵:薮内正幸/福音館書店)、「ぶーぶー じどうしゃ」(作・絵:山本忠敬/福音館書店)など)、親子で遊びを楽しめるもの(「でてこい でてこい」(作・絵:林明子/福音館書店)、「くっついた」(作・絵:三浦太郎/こぐま社)など)、言葉のリズムが楽しめるもの(「ころ ころ ころ」(作・絵:元永定正/福音館書店)、「がたん ごとん がたん ごとん」(作:安西水丸/福音館書店)など)など。
また、1歳代後半には、やさしい内容の物語絵本も読めるようになっていきます。

★2~3歳代

2歳になると、耳からの情報(言葉)がたくさん入るようになるため、文字が少し多い絵本も読めるようになります。「どうすればいいのかな?」(作:渡辺茂男/絵:大友康夫/福音館書店)のような、食事や睡眠、着替えなど日常生活に寄り添ったテーマで、生活や遊びと密着した内容の絵本がおすすめです。
また、3歳を過ぎると、「おおきなかぶ」(作:A・トルストイ/絵:佐藤忠良/訳:内田莉莎子/福音館書店)、「てぶくろ」(ウクライナ民話/絵:エウゲーニー・M・ラチョフ/訳: 内田莉莎子/福音館書店)など、登場人物が次々に出てくるような物語も理解し、楽しめるようになります。ただ、まだ経験は不足しているので、場面は展開せず、その場で完結するものが中心。この年代には、「同じ場所で、繰り返し同じことが起こる」という内容がとても魅力的なのです。

★4~5歳代

登場人物が多くて、場面があちこちに展開していくような物語は、この年齢になってから。経験が積み重なった4歳頃から、ぐっとお話に入りこめるようになるのです。
さらに5歳にもなると、複雑で長いストーリーの絵本でも楽しむことができるようになります。「ももたろう」(作:松居直/絵:赤羽末吉/福音館書店)や「おおかみと七ひきのこやぎ」(グリム童話/絵:フェリクス・ホフマン/訳:瀬田貞二/福音館書店)などの昔話絵本、「こんとあき」(作:林明子/福音館書店)や「おおきな おおきな おいも」(原案: 市村久子/作・絵:赤羽末吉/福音館書店)などの冒険や挑戦を描いた物語なども、想像力が培われておすすめです。

★6歳~

「次は何が起こるのだろう」「この後どうなっちゃうの?」と、ドキドキ・ワクワクするような物語が、この頃の子どもたちを惹きつけます(「おしいれのぼうけん」(作:ふるたたるひ・たばたせいいち/童心社)など)。
また、前回紹介した科学の絵本(自然・植物・動物・社会・宇宙・人など、さまざまなモノ・コトがテーマになっている絵本)や知識の絵本も、この年代の子どもたちの興味をかきたて、好奇心を満たしてくれることでしょう。
さらに、「エルマーのぼうけん」(作:ルース・スタイルス・ガネット/絵:ルース・クリスマン・ガネット/訳:渡辺茂男/福音館書店)、「ロボット・カミィ」(作:古田足日/絵: 堀内誠一/福音館書店)のように、毎日少しずつ読んであげられるような、幼年童話もおすすめです。

Q.年齢以外で、絵本を選ぶコツは?
A.子どもとじっくり関わって、興味のあるものをキャッチしよう

お子さんとの日々の生活を振り返ってみてください。最近はどんなことができますか? 何に興味を持っていますか? まずは、目の前にいるお子さんをよく見て、関心のありそうなテーマをキャッチすることが大切です。乗り物をよく見ている、生き物に興味が出てきた、お料理をしたがる、仲良しのお友達ができた……。自分の好きなものが出てくる絵本や、主人公に自分を投影して(主人公になりきって)お話の展開を楽しむことができる絵本なら、子どもたちは夢中になるでしょう。

また、せっかく四季のある国に生まれ育っているので、絵本を選ぶときは、ぜひ「季節」も考慮できたらいいですね。自然の美しさや不思議さを感じたり、季節の行事に興味を持ったりして、親子で楽しむきっかけになったら素敵だなと思います。

さらに、一冊好きな絵本・楽しめる本に出合ったら、その著者の違う作品や、同じシリーズの絵本を読んでみる、というのも手。有名な「ぐりとぐら」や「14ひきシリーズ」などには、季節ごとの作品もあっておすすめです。
ちなみに、私がいちばん好きなシリーズ作品は「ともだちや」(作:内田麟太郎/絵:降矢なな/偕成社)。きつねとオオカミの友情物語で、シリーズが進むごとにケンカしたり仲直りしたり……どんどんお話が発展していくので面白いですよ。

Q.読む絵本は、親が決める? 子どもに選ばせる?
A.親子それぞれが読みたい絵本を選ぶ日を設けよう

3歳代までは親御さんが絵本を用意していいと思います。
好き嫌いの好みがはっきりしてきて、自己主張も強くなってくるのは4歳ごろ。ですから、5歳前後になったら、週に1~2日ほど「好きな本読んであげるから持っておいで」という日を設けてもいいですね。年長になったら週に2~3回くらいでしょうか。

「でも、疲れている時に限って、長い絵本を持ってくるんですよね~」という保護者からのお話もよく聞きます。そんなときは半分読んで、「続きはまた明日ね」でもいいんです。その時の自分の気持ちや疲れ具合などを考えて、無理のないようにしましょう。

そしてジャンルが偏りすぎないように、「今日、お母さんこんな素敵な絵本見つけちゃった~」などと言って、自分の気に入った絵本、良質とされているような本を読む、という日も設けてみてください。
親も子も、「読み聞かせの時間が楽しい!」と思えるような絵本選びができるといいなと思います。

Q.同じ絵本ばかり読みたがる……いろいろな本を読んだほうがいい?
A.同じものを何度読んでもOK! そんな本に出合えたことが幸せです

子どもは、好きな絵本を何度でも読んでもらいたがりますよね。なぜでしょうか?

まず「お話の内容がわかっているから、安心して絵本の中に入り込める」というのがひとつ。子どもにとって、何度も読んでいる絵本は、“知っているからこそおもしろい”のです。そして、読めば読むほど楽しさは増し、本が自分のものになっていきます。

加えて、「お父さん・お母さんの読み方が好きで面白いから何度でも味わいたい」というのがもう一つの理由。子どもの「もう一回読んで!」は、読み手への評価であると思います。いい読み方だったんだな、楽しませられたんだな、と自信を持ってくださいね。同じ本を何度も読むのはちょっと大変かもしれませんが、できるだけ付き合ってあげてほしいと思います。

幼い頃に繰り返し読みたい絵本に出合えるのは、本当に素晴らしいこと。そんな「大好きな一冊」を糸口に、本への興味は無限に広がっていくでしょう。そして、何度も読んでもらって心に刻まれた絵本は、大人になっても忘れられない大切な一冊になるはずです。

次回は、「第5回 絵本に関する悩み・疑問② ~絵本を上手に読むには、どうしたらいい?」というテーマで、具体的な読み聞かせの方法についてお伝えします。

ぷっぷるコラムメンバーズ・よこ(横山香織)

10歳・8歳・6歳のわんぱく3兄弟を育てるママライター。
親子の生活がちょっと豊かになるような、等身大の情報を発信していけたらと思っています。

JASRAC許諾
第6854640024Y38029号