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子どもの心を育む 絵本の読み聞かせ
~絵本専門士 鴫原晶子さんに聞く~

「絵本専門士」として幅広く活動されている鴫原晶子先生にインタビュー。
絵本とは何なのか、読み聞かせがなぜいいのか、いい絵本を探すヒントなど、
「絵本の読み聞かせ」に関するさまざまな興味深いお話を伺う連載の第6回(最終回)です。

<鴫原晶子さん>

絵本専門士。
幼稚園教諭の経験を経て、東京教育専門学校・前副校長、現在非常勤講師。
保育園の園内研修や子育て講座の講師を務める。
代表を務める「保育と絵本の研究会GOBOの会」にて、おはなし会や勉強会なども実施。
ペーパークイリングインストラクターや、おもちゃコーディネーターの肩書きも持つ。

[第6回] 絵本に関する悩み・疑問 ③

「今の時代ならではの絵本に関する悩み」

現在子ども向けに出版されている本は種類が豊富。物語の絵本だけでなく、図鑑や迷路、クイズなどが題材になった本も子どもたちに大人気です。また最近は、スマホやタブレットなどで読めるデジタル絵本も増えています。紙の絵本との違いはあるのでしょうか?

今回は、そんな今の時代ならではの絵本事情に関して保護者の皆さんが抱く疑問・悩みに対し、鴫原先生にお話を伺いました。

Q.子どもが選ぶのは図鑑・迷路・クイズばかり。物語も読んでほしいのですが…
A.図鑑も迷路も楽しみつつ、お話の絵本も用意し続けましょう

図鑑も迷路もクイズの本も素晴らしいので、選ぶのをやめることはありません。ぜひ続けてください。でも、親御さんとしてはお話の絵本にも少し触れてほしいですよね。そんな時は、「それはそれ、これはこれ」と割り切って考えましょう。

虫、動物、乗り物、迷路、クイズ、間違い探し……好きなもの、夢中になれるものがあるのはとても良いことです。これらの本は子ども自身が自分でじっくり見て、楽しんでもらえればいいと思います。そして、それとは別に「ママが読んであげるのはこっちね」と物語の絵本を差し出してみてください。

子どもの興味が図鑑に行っちゃったから……といって読み聞かせをやめてしまうのではなく、平行して親御さんが読み続けることが大切。「この絵本は、お母さんと一緒に楽しもうよ」という感じで、メルヘンやファンタジーの世界を旅するような絵本も、引き続き用意していきましょう。

Q.数・英語・挨拶・トイレなど、知育を目的に絵本を読むのはアリですか?
A.絵本タイムは親子の触れ合い時間。できれば知育やしつけと切り離して

絵本は何かを教える手段ではなく、絵本には絵本だけの有効性があります。絵本を読むことで、子どもの中には想像力や語彙力、美的感覚など、すばらしい力が蓄えられていきます。知識以外のいろいろな力が育まれているんですね。ですから知育やお勉強とは、また別のものと捉えてください。

1.2.3の本も、A.B.Cの本も、ご家庭で楽しむ分にはもちろん良いのですが、物語絵本の代わりに親御さんが読み聞かせするようなものではないのかなというのが本音です。読んであげるというより、一つひとつ文字や絵柄を確認しながら楽しむといいのではないでしょうか。前述の図鑑的な扱いにするのがいいかもしれませんね。

また、生活習慣の本も同様に、押し付けにならないことが大切です。特にトイレトレーニングのために排泄関係の絵本を読むのは、あまり効果がないように思います。オムツはいつか外れるもの。焦らせなくても大丈夫ですし、そういう絵本を面白おかしく読んでしまい、逆効果だった……ということもあるようです。

興味を持って楽しく読むのはいいのですが、絵本の内容を「役立てよう」「覚えさせよう」とすると、子どもは絵本を心から楽しめなくなってしまいます。絵本の時間は、唯一「親と子が体を寄せ合って、一緒の時間を楽しむもの」として、できれば知育やしつけとは切り離して考えてほしいと思います。

Q.残酷な絵、恐い物語の絵本を読むと、子どもに影響が出る?
A.子どもが恐怖心を抱くような作品は、就学前は控えましょう

子どもは、おばけや怖い話が大好きです。せなけいこさんのおばけシリーズや、誰もが知っている怪談話や昔話、怪物や妖怪が出てくる本など……。そのような“ちょっぴり怖い絵本”は、それを読んでくれる温かい声と、安心して逃げ込める場所があることで、子どもたちは何回もくり返し読んでほしいと思うのですね。

しかし、そのような長く読み継がれてきた定番作品に加え、ここ数年、思いっきり怖いタイプの絵本も出てきています。なかには、大人が読んでも本当に怖いものもあります。このような作品は、特に就学前はあえて読まなくてもいいかなと思います。幼い子ほど感受性が豊かですから、眠れなくなる子やトイレに行けなくなる子もいるかもしれません。ポイントは子どもが“恐怖心を抱くかどうか”です。もちろん、脅しに使うのもやめましょう。

成長し、小学校の中学年~高学年にもなれば、怖いお話を積極的に楽しむ子も出てきます。物語の中の教えに気づいたり、因果関係を考えたり、ミステリーのように楽しんだり、怖さに対して自分なりの解決方法を見出していくからです。

ですから、そのくらいになるまでは、口コミや宣伝の力に惑わされずに、できれば親御さんが中身を見て「怖すぎないか」「恐怖心を与えてしまわないか」を確認してほしいと思います。安易に「いま売れているから」「話題になっているから」という理由だけで絵本を選ばないほうがいいこともあります。

Q.大きくなっても「読んで」と言われる。自分で読むように促した方がいい?
A.読み聞かせは何歳まででもOK! 子どもが「もういい」と言うまで続けて

絵本の読み聞かせについて、「いつまでママ・パパが読むの?」「小学生になっても続けた方がいい?」という疑問を持つ親御さんは多いようです。

もちろん子どもが幼いうちは字が読めないので、絵本は大人が読んであげますよね。ところが、自分で文字を読めるようになっても、子どもは絵本を読んでもらいたがります。なぜなら、読み聞かせをしてもらうこと自体が“心地いいから”です。

大好きな人が読んでくれる言葉やストーリーを耳で聞きながら、目の前に広がる絵の世界に思いっきり浸ることができる。そして、体を寄せ合い、たっぷりとお母さん・お父さんの愛情を感じることができる。そうした温かい時間を求めているのです。

ですから、たとえ字が読めるようになってきても、親御さんに読んでもらう時間を味わいたいと思っているなら、それをやめることはありません。お子さんから「読んで」と言われたら、何歳まででも読んであげてください。せめて小学校低学年(7・8・9歳)のうちは、「自分で読みなさい」「もう〇歳でしょ」「〇年生なんだから」というのはナシにしてあげてほしいなと思います。

Q.タブレットなどで読む電子絵本と、紙の絵本では違いがありますか?
A.触り心地やめくる音まで含めて「絵本」。デジタルにはない良さがあります

スマホやタブレットなどで、ふだんから電子書籍に親しんでいる方も増えていますよね。しかし、子どもの絵本に関してはやはり、紙の絵本を大切にしてほしいと思います。

ページをめくるときの音、そこで発生する風や空気の動き、パタンと閉じる音、それも含めて絵本であると、福音館書店の松居直先生はおっしゃいました。そして、読み聞かせによって、読み手も聞き手も絵本の中にいる、という状態が作り出されるのです。

また、買った絵本を補修しながら長年読み続けたり、図書館の絵本を丁寧に触ったりと、紙の絵本には「大事なものを扱う」という感覚を身につける役割もあります。こうしたことは、デジタルの絵本にはできないことです。

もちろん、電車の中、病院の待ち時間など、外出時にはタブレットも便利ですよね。絵本のアプリを活用するときも、与えっぱなしにするのではなく、画面を見て、親御さんが読んであげるといいと思います。

またYouTubeには絵本の動画もありますが、それを子どもに見せても、読み聞かせの代わりにはなりません。大人が本の内容を事前に知ることができる資料程度に思っていただけるといいと思います。

毎日、仕事に家事に忙しく、お母さん・お父さんは大変だと思いますが、やはり、直接あなたの声で我が子に読んであげてほしいのです。アプリや動画でたくさん絵本を見せるより、親が1冊読み聞かせるほうが、何十倍も価値があります。なぜなら、子どもは「自分のために読んでくれている」というのを感じているからです。

「絵本の時間が楽しかった」「読んでくれて嬉しかった」……その気持ちを堆積していけば、それはきっと人生の糧になるし、大人になってもその気持ちが自分を助けてくれるでしょう。親と子が絵本を介して心を通わせることは、それほど価値のあることなのです。

<鴫原先生のおすすめ絵本>

寒さも和らぎ、春はもうすぐそこ。そんな時季におすすめの絵本を伺いました。
年代別にご紹介しますので、ぜひ読んでみてくださいね。

★乳児さん(0~2歳)

「はなを くんくん」(文:ルース・クラウス/絵:マーク・シーモント/訳:木島始/福音館書店)
「こりゃ まてまて」(作:中脇初枝/絵:酒井駒子/福音館書店)

★幼児さん(3~6歳)

「ぽとんぽとんは なんのおと」(作:神沢利子/絵:平山英三/福音館書店)
「いちごばたけの ちいさなおばあさん」(作:わたりむつこ/絵:中谷千代子/福音館書店)

★小学生(7歳~)

「根っこの こどもたち 目をさます」(作:ヘレン・ディーン・フィッシュ/絵:ジビレ・フォン・オルファース/訳:石井桃子/童話館出版)
「とべ バッタ」(作・絵:田島征三/偕成社)

絵本専門士の鴫原先生に聞く「絵本の読み聞かせ」のお話は今回で最後です。いかがだったでしょうか。子どもに読み聞かせができる期間は、人生の中でほんのわずかです。これからも絵本の読み聞かせが、親にとっても子どもにとっても、楽しく幸せな時間になるよう願っています。

ぷっぷるコラムメンバーズ・よこ(横山香織)

11歳・9歳・6歳のわんぱく3兄弟を育てるママライター。
親子の生活がちょっと豊かになるような、等身大の情報を発信していけたらと思っています。

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