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子どもの心を育む 絵本の読み聞かせ
~絵本専門士 鴫原晶子さんに聞く~

「絵本専門士」として幅広く活動されている鴫原晶子先生にインタビュー。
絵本とは何なのか、読み聞かせがなぜいいのか、いい絵本を探すヒントなど、
「絵本の読み聞かせ」に関するさまざまな興味深いお話を伺う、連載第5回目です。

<鴫原晶子さん>

絵本専門士。
幼稚園教諭の経験を経て、東京教育専門学校・前副校長、現在非常勤講師。
保育園の園内研修や子育て講座の講師を務める。
代表を務める「保育と絵本の研究会GOBOの会」にて、おはなし会や勉強会なども実施。
ペーパークイリングインストラクターや、おもちゃコーディネーターの肩書きも持つ。

[第5回] 絵本に関する悩み・疑問 ②

「絵本を上手に読むには、どうしたらいい?」

絵本を“声に出して読む”機会というのは、お子さんが生まれるまでなかなかないものですよね。そのせいか「うまく読む自信がない」、「子どもが聞いてくれなかったらどうしよう」、と不安になる人は多いようです。

今回は、そんな「読み方」について保護者の皆さんが抱く疑問・悩みに対し、鴫原先生にお話を伺いました。抑揚やタイミングなど、具体的なアドバイスがたくさんですが、「最初から、上手に読もうとか、子どもを喜ばせよう、なんて気負わなくていいんです」と鴫原先生はいいます。

「家庭で絵本を読む効果は、親子のスキンシップやコミュニケーションを深めること。どんなふうに読んでもらっても、その時間は子どもにとって宝物です。だからアドバイスは参考までに、自分が余裕のあるときに取り入れてみようかな、という程度で十分です。うまく読もうとするより“子どもと一緒に絵本を楽しむこと”が大切です。無理せず、ラクな気持ちで読んでくださいね」

Q.淡々と読む? それとも感情をこめて読む?
A.演技は必要ありません。“抑揚”や“テンポ”だけ少し意識して

登場人物にあわせて声色を変えたり、場面に応じて身ぶり手ぶりをつけたりしたほうがいいのかな……と考える方も多いと思いますが、読み聞かせにおいて、“極端な”声色や演技はまったく必要ありません。

なぜなら、登場人物の声は、子どもの心の中でイメージしているから。読み手の解釈でいろいろ脚色して演じすぎると、その読み方自体が気になってしまって、子どもがお話に入り込めない……なんてこともあります。演じる行為は、子どもが自分の心の中でやっているので、親御さんは無理せず自然に読むだけでOKです。

ただ、抑揚もなく淡々と読むと、面白みに欠けることがあるので、余裕があるときは「抑揚」と「テンポ」を意識してみてください。元気なセリフなら少し大きめの声で読んだり、逆の場合は小さな声でささやくように読んだり。物語の内容にあわせて、ゆっくり読んだり、リズミカルに読んだり。「あ、そうか!」といった文のときは、一呼吸おいてから読み進めるなんていうのもいいですね。

一本調子ではなく、少しだけ緩急をつける感じ。特に長い話の場合は、そんな風に“メリハリ”を大事にすると、物語が生き生きとしてきますよ。

Q.読む体勢、ページをめくるタイミング、等で気を付けることは?
A.どんな体勢でもOK! 慣れてきたらページをめくる速度に工夫を

よく親子で絵本を読むときは、「子どもをひざの上に乗せて」と言われますが、必ずしもそうしなければいけない、ということはありません。隣に座って読んでもいいし、寝っ転がって読んでもいい。添い寝しながら読んであげるスタイルなら、ねんねの赤ちゃんでも楽しめますし、寝る前の読み聞かせにもぴったりですね。

また、ページをめくるタイミングは、絵の流れを大事にできるといいですね。
例えば、「ぐりとぐら」(作:中川李枝子/絵:大村百合子/福音館書店)で、カステラのできあがりを見るシーン。その見開きページには、
「さあ、できたころだぞ」「ぐらが おなべのふた をとると」
「まあ! きいろい かすてらが、 ふんわりと かおを だしました」
と書いてあるのですが、
私は、先の2文は前のページのうちに読んでおいてから、「まあ!」でページをめくり、
「きいろい かすてらが…」に合わせ、できあがりの様子を見せています。
そうすると、言葉と絵の動きがぴったり合って、驚きが増すんですね。

とはいっても、最初は難しいと思うので、「ページを早くめくる」「遅くめくる」といった動作も、読み聞かせの一部なんだな、と感じてもらえるだけで十分。

もし、すでに何回も読んだりして、お話の流れが頭に入っているような絵本があったら、少しだけ話のテンポや情景描写に合わせてページをめくる工夫をしてみてください。きっと、お話がさらに輝き、お子さんと共有する時間がより楽しくなりますよ。

Q.最後まで読まずにやめたり、どんどん先にページをめくってしまったりする…
A.「最後まで読まなくては」という気持ちはいったん忘れて、臨機応変に

読んでいる途中に、子どもがパタンと絵本を閉じてしまった。もしくは、絵本を読んでも子どもがあまり反応を示さない、ということもありますが、それだけで絵本が苦手とは判断できません。眠かったのか、他の遊びがしたかったのか、それともまだその絵本に興味がなかったのか……。子どもなりの理由がある、という場合がほとんどです。

ですから、途中で読むのをやめてしまっても気にしすぎないでください。子どもから見えるところに絵本を置いておくと、ふとしたときに興味がわいて、「読んで」と言い出すこともありますし、初めて読んだときは反応がなかったけれど何度も読むうちにその絵本が好きになる……ということも多々あります。とにかく、その日はやめたとしても、別の日にまた読んでみる。そうして読み続けることで、子どもの聞く力が自然と育ち、読み聞かせを心地よいと感じるようになっていきます。

また、読み終わる前にどんどんページをめくってしまう、という話もよく聞かれますが、そんな時はどうぞそのままめくらせてあげてください。1~2歳の子は特に「ペ-ジをめくる」という新しく覚えた動きを試したい時期、つまり絵本そのものと遊んでいるのです。しばらくすれば、しなくなります。3~4歳になってもめくってしまう場合は、その子の許容量を超えた長いお話で、飽きているかもしれません。絵本の内容が子どもに合っているかどうか、見直してみてもいいですね。

いずれにせよ、「最後まで読まなくては」という気持ちはいったん忘れて、どーんと構えましょう。子どもが好きなペ-ジを開き、絵を見て「おいしそうだね」「かっこいいね」などと声をかけるだけでもいいんです。だんだんと子どもは絵本に慣れ、やがて一冊を最後まで聞ける日がやってきます。

Q.途中で口をはさんできて、なかなか先に進まない……答える?読み進める?
A.できるだけ答えましょう。絵本を通じたコミュニケーションに価値があります

読み聞かせをしていると、その途中で子どもが絵の中の何かに興味を持ち、指を差したりすることがあると思います。そんな風に、何か見つけて報告してきたときは、読み聞かせをいったんストップして「ほんとだね」などと答えてOK。子どもが何かに気付くというのはすごく大事なこと。それをいち早く伝えて「ママ、ぼく(わたし)、すごいでしょ」と言っているようなものなので、ぜひ答えてあげてください。

同様に、「これは何?」「どういう意味?」などの質問にも、簡潔に答えてあげてください。無理に読み進めるのではなく、「絵本って面白い」と実感させるほうが大事だからです。

また、大人はついつい文章ばかりを目で追ってしまいますが、子どもは本当に絵をよく見ています。時には、読み手が気づかなかった面白さを教えてもらうこともたくさんあります。その素敵な発見を、一緒に驚いたり喜んだりすると、子どもも嬉しいもの。絵本を通じて気持ちを共有する……そんな豊かな時間が生まれることも、絵本のある子育ての大きな魅力です。

もし、物語が進まなくなるほど質問が頻繁になってしまったり、絵本と全く関係ない話が続いてしまったら、「それは絵本が終わってからにしようか」と軌道修正してもいいですね。その場合は、「続きを読んでもいい?」などと子どもに聞いてから進みましょう。

Q.読んでいる途中で親が質問したり、読んだ後に感想を聞いてもいい?
A.感想は聞かず、読みっぱなしが◎。読み終えたときの喜びや満足感を大事に

読み聞かせの最中に、大人が「どうなるのかな?」「これはなに?」など、子どもへ聞くのはあまりおすすめできません。せっかくの子どもの集中が、話しかけられることで途切れてしまうからです。また、絵や文の説明を加える、どうしてこうなったかの要約をする、ということも、子どもの自由な理解の妨げになるかもしれないのでやらないほうがいいでしょう。

そして読み終わったあとも、あれこれ質問しないであげてほしいなと思います。子どもが黙っていると「どうだった?」「どこがおもしろかった?」などと聞きたくなるかもしれません。でも、つまらなかったら、途中で立ち歩いたり、閉じたりしていたはず。最後まで聞いてくれただけで、それはもう面白かった証拠です。それに、楽しんでいたかどうかは、子どもの息遣い・表情・リアクションなどでわかるもの。言葉で言わせるのではなく、子どもの様子を見て判断すれば十分です。

なぜなら、絵本を読み終わった後、子どもは自分で内容を振り返ったり、想像を膨らませたりして、湧き上がる感情を噛みしめています。その中にはきっと、言語化できないような感情もたくさん含まれているはずです。感想を求めることで、その余韻に浸る大切な時間を壊してしまうかもしれません。

実際、感想など聞かずに放っておいても、後で子どものほうから「あれって、こういうことだよね?」などと話してくる子もいます。きっとその子は、それまでずっと心の中で、絵本の内容を反芻(はんすう)したり、咀嚼(そしゃく)したりしていたんですね。それでフッと出てきた言葉を伝えてくれた……絵本が心に染み込んだんだなぁと感激しました。読み終わったあとの、その大切な時間をぜひ確保してあげてほしいなと思います。

<鴫原先生のおすすめ絵本>

寒さの厳しい冬の時季におすすめの絵本を伺いました。
年代別にご紹介しますので、ぜひ読んでみてくださいね。

★乳児さん(0~2歳)

「めのまどあけろ」(作:谷川俊太郎/絵:長新太/福音館書店)
「へっこ ぷっと たれた」(構成・文:こがようこ/絵:降矢なな/童心社)

★幼児さん(3~6歳)

「ちょろりんのすてきなセーター」(作・絵:降矢なな/福音館書店)
「おかしなゆき ふしぎなこおり」(文・写真:片平孝/ポプラ社)

★小学生(7歳~)

「ゆき」(作・絵:ユリ・シュルヴィッツ/訳:さくまゆみこ/あすなろ書房)
「サラダとまほうのおみせ」(作・絵:カズコ・G・ストーン/福音館書店)

次回は、「第6回 絵本に関する悩み・疑問③ ~現代っ子の絵本に関する悩み~」というテーマで、今の時代だからこその困りごとついてお伺いします。

ぷっぷるコラムメンバーズ・よこ(横山香織)

11歳・9歳・6歳のわんぱく3兄弟を育てるママライター。
親子の生活がちょっと豊かになるような、等身大の情報を発信していけたらと思っています。

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